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家畜皮の特徴

 皮は動物種、品種、年齢、性、用途(肉用、乳用、役用)、飼育法、栄養状態、皮の部位などによって線維構造は大きく異なる。

(1) 牛皮(Hide、Skin)

動物皮として最も多く使用されている牛は、品種で毛の色や分布、斑点に特徴があることが多い。牛皮の毛包はほぼ均一に分布した単一毛包である。

牛皮は乳頭層の凹凸が小さく比較的均質なコラーゲン繊維構造をもち、機械的強度も大きい。真皮の乳頭層と網状層の区別がつき易い。皮の厚さはネック部がもっとも厚くて、バット部にかけて薄くなり、ショルダーからバットの前部、ベリー部がもっとも薄くなる。
 成牛皮のバット部位の厚さは約6mm、小牛皮は約2mm程度である。繊維束はネック部が太くて枝分かれの少ないもので、ある間隔をもって緩やかに交絡している。ショルダー部では太さの揃った繊維束同士でよく交絡しており、その間に細かい繊維束が混じり密度が濃くなっている。
ベリー部は枝別れの少ない繊維束が銀面に平行に走っており、交絡の程度が低くて空隙が多い。
 幅広い年齢の原料皮が供給可能である。製革原料として最も多用されている。動物の皮は若いほど小さく薄く、銀面(真皮層の上皮組織がとれた外表部)の組織は平滑で、きめが細かく、病気、かき傷、皮膚病などの損傷も少ない。
 一般的に成牛皮、馬皮などのように25ポンド以上(約11.5kg)ある厚くて大きな重い皮をハイド、子牛皮、羊、豚などのように薄くて小さい、軽い皮をスキンと呼び区別している。牛皮は重量の他に性別などによってステア、ブル、カウ、キップ、カーフのように区分され、さらにヘビーステア、ライトステアなどと細分化される場合もある。
 わが国で生産される牛皮は内地あるいは地生(じなま)とも呼ばれる。さらにホルスタイン種の乳牛皮は「ホルス」、黒毛和牛の皮は「一毛」などとも呼ばれている。
 わが国で最も多く使用されている牛皮はヘビーステア、ホルス、デイリーステア、一毛、ライトステアの順である。

・ステア steer hide;2年以上育った25~28kgの去勢雄牛皮
・キップ kip skin;生後6ヵ月から2年以内で7~14kg
・カーフ Calf skin;生後6ヵ月以内で4~7kgを子牛皮
・カウ Cow;成牛雌皮
・ブル Bull;成牛雄皮

皮の部位の名称

皮の部位の名称

(2) 豚皮(Pig skin)

 世界各国で飼育されている豚の品種は恐らく100余種以上である。品種としてヨーロッパ種(ランドレース、大ヨークシャ種、バークシャ種など)、アメリカ種(ポーランド・チャイナー、ハンプシャー、チェスター・ホワイトなど)、アジア地帯の種(中国豚、台湾豚、琉球豚など)がある。
 豚皮(Pig skin)の最大の特徴は、毛(剛毛)が3本ずつまとまって全皮厚(銀面から肉面)を貫通している。このため毛穴由来の凹凸が多い銀面模様を示す。表皮が皮全体の1~3%を占めて毛根の末端が皮下組織に達しているために、豚皮は網様層を欠いた乳頭層だけからなっているといえる。
 銀面は凹凸が多く大きな凸と凹面に、さらに小さな凹凸がある松かさの鱗片のようで、これが豚革特有の突起の多い銀面模様となっている。また、真皮は毛包や皮脂腺などが少ないので充実しているため、繊維の緻密さを活かして型押し革として、靴、カバン、時計バンド、また毛穴の通気性を生かして裏革、衣料革、手袋革などに利用される。
 組織を構成するコラーゲン繊維は牛皮よりはるかに細く、バッフィングにより繊細な起毛の革が得られる。

 線維構造はバット部が厚くて繊維束が太く走行角度も大きくてよく交絡し、充実して密度が濃い。その他の部分は交絡と密度が劣っている。
 毛球の部分から下には脂肪細胞で満たされた袋状のものが皮下組織面に多量にある。さらに成豚の脂肪は表皮や真皮など全層に散在している。

 

 

 

 

(3) 山羊皮(Goat skin)

 山羊は家畜中最も品種が多い。普通用途別に乳用種、毛用種、兼用種に分けられる。乳頭層が占める割合は皮の厚さの1/2強で小牛皮に似ているが、小牛皮に比べて乳頭層にはエラスチン繊維が多く、網様層の繊維束密度が少ない。エラスチン繊維は毛包と皮脂腺の周囲を囲んで銀面に平行して走行しておりよく交絡している。コラーゲン線維束は牛皮ほど走行角度が大きくなく交絡の程度も少ない。繊維束は準備工程で細かい線維に解けること、エラスチン繊維の密度が濃いこと、線維束の交絡が少ないことから山羊革の特徴である強靭で、柔軟、軽量である性質が生み出される。銀面の磨耗性に優れた革である。大きさ(年齢)によりゴートとキッドに分類される。

(4) 羊皮(Sheep skin)

 品種は多くて約200余種といわれる。用途により毛用種(ウールタイプ:メリノ)、肉用種(ヘアタイプ)毛・肉兼用種、毛皮用種、乳用種に大別される。動物毛は粗毛(ヘア)と綿毛(ウール)で覆われている。特にウールタイプの皮は乳頭層に細かい毛包が数多く分布し、汗腺、皮脂腺が多く分布するために、革としては空隙が多くてコラーゲン繊維が少ないので、ここで2層に分離しやすい欠点がある。

 加えて毛包が長くて皮の2/3に達しており、網様層は厚さが薄くて繊維束も銀面に対して平行なものが多い。また、乳頭層と網様層の接合部位には脂肪が蓄積しやすく、この部位が空間でコラーゲン繊維が少ない。
 コラーゲン繊維は細く、交絡がゆるいので軽くて柔軟な革となる。そのため衣料、手袋等に多く 使用される。大きさ(年齢)によりシープとラムに分類される。

(5) 馬皮(Horse hide)

 馬は発祥地別により西洋馬と東洋馬に分かれる。馬皮のコラーゲン繊維の構造は牛皮に比べて粗大であるが、毛包の配列は牛皮と同じ単一毛包である。しかし、牛皮に比べ毛穴が少なく銀面がスムースである。
 大きな馬皮のバット部から非常に密に詰まった「板」あるいは「セル」と呼ばれる部分がある。この部分を「コードバン(Cordvan)」と呼ぶ。植物タンニン鞣しをした革からは高級な鞄、ランドセル、ベルト、時計バンドなどに利用される。この部位以外は靴裏革などに多く利用されている。

(6)その他(Other skin)

 鹿皮は傷が多いこと、比較的銀面が硬いため銀面を除いて使用されることが多い。代表的な革はセーム革である。真皮層の繊維構造が比較的粗く、鞣し方法によっては非常に柔軟であるため武具(剣道具の籠手など)、手袋、衣料などに用いられる。伝統工芸品として印伝革がある。
 カンガルー皮は比較的薄く、製品にした時にも繊維構造が切断されることが少ないので強度に優れており、スポーツシューズ、手袋、ダンス靴などに愛用される。
 爬虫類のワニ、トカゲ、ヘビ、魚類のサメ、エイ、ウナギ、鳥類のダチョウ、エミールなどは特徴ある銀面模様を生かして珍重され、ハンドバッグ、財布、服飾用ベルトなどに愛用される。

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