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平成23年度日本エコレザー講習会(米子・那覇)

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1.事業内容 平成23年度日本エコレザー講習会(米子・那覇)実施委託契約事業
1.1 概要

我が国唯一の皮革学術団体である NPO 法人日本皮革技術協会は、経済産業省の皮革産業人材育成事業を通して平成 13 年度から大都市を中心に皮革事業者を対象にし、皮革の基礎及び応用知識を伝播し、企業経営に役立たせるために皮革に関する講習会を開催してきた。

最近話題の「日本エコレザー」は、 消費者に安心と安全を供し、環境に寄与し、社会貢献を推進し、国際皮革学会でも高い評価を得ている。しかし、「日本 エコレザー」の認知は、まだ一般消費者まで行き渡っていないのが実情である。

そこで 、 ( 社 ) 日本皮革産業連合会は、 「日本 エコレザー」 に対する 認知 度・理解の向上.を図るために一般消費者などを対象に「日本エコレザー講習会」事業案を計画した。本会は日本各地での講習会開催の実績やエコレザーに対する認定基準の作成などの経緯から本事業を実施母体として受託した。

講習会の開催地は、本会の 50 年の歴史の中で 革に関する講習会が一度も行われていない2地域(米子と那覇)を選び、当地で講習会を開催した。開催に当り、沖縄県庁から地域産業の振興及び活性化という観点から後援の協力を得た。

講習会には、先ず DVD による革の基本知識を学び、ついでエコレザーの意義やメリットを知っていただく講義コースと 小物づくり(トレー)や 革の見方・取扱い方など 体感学習を中心とした実習コースの2コースを受講してもらった。 受講対象は、主として一般消費者としたが、販売員など新知識に興味のある方々にも聴講してもらった。

その結果、2地域において多数の参加があり、受講者から非常に喜ばれ、感謝され、 次回開催も強く要望されるなど期待以上の成果を得た。

1.2 内容

「日本エコレザー講習会」事業

1.2.1 事業主体及び対象
主催 特定非営利活動法人  日本皮革技術協会
〒 670-0964 兵庫県姫路市豊沢町 129  あさひビル4階 電話 079-284-5899
後援 沖縄県商工労働部商工振興課
対象 一般消費者、販売他
1.2.2 開催場所・日時・講義テーマ
1) 米子会場
日 時: 平成23年10月5日(水)午前9時30分~午後4時30分
場 所: 米子コンベンションセンター BiG SHiP 6階第7会議室
〒683-0043 鳥取県米子市末広町294. 電話 0859-35-8111
2) 那覇会場
日 時: 平成24年1月26日(木)午前9時30分~午後4時30分
場 所: ホテル日航那覇グランドキャッスル 2F 首里の間 Aホール
〒903-8601 那覇市首里山川町1-132-1 TEL:098-886-5454
1.2.3 講習会テーマと講師
1) 米子会場

「革の造り方、革の歴史、なめし方法、革の見方、エコレザーとは、革の素晴らしさ、革の取扱い方、革の楽しみ方」
ⅰ 講義コース1「革はどのように造られるのか、革の歴史、革の種類」 午前(90分)
NPO法人 日本皮革技術協会 理事長 杉田正見
ⅱ 講義コース2「革の特徴、革の長所と短所、エコレザーの有用性」 午前(90分)
NPO法人 日本皮革技術協会 理事長 杉田正見
ⅲ 実習コース1「革の見方、革の素晴らしさを知る」 午後(90分)
NPO法人 日本皮革技術協会 理事 中村 蔚
ⅳ 実習コース2「革の取扱い・手入れ法、苦情事例、楽しみ」 午後(90分)
NPO法人 日本皮革技術協会 理事 中村 蔚
2) 那覇会場

「革の基礎・応用知識を体感する」
ⅰ「革はどのように造られるのか、革の歴史、革の種類」 午前(90分)
NPO法人 日本皮革技術協会 理事長 杉田正見
ⅱ「革の特徴、革の長所と短所、エコレザーの有用性」 午前(90分)
NPO法人 日本皮革技術協会 理事長 杉田正見
ⅲ 革の実験・実習1「革の素晴らしさを知る」 午後(90分)
NPO法人 日本皮革技術協会 理事 中村 蔚
ⅳ 革の実験・実習2「革の取扱い・判別法を学ぶ」 午後(90分)
NPO法人 日本皮革技術協会 理事 中村 蔚
3)参加者数
受講総数 178 名:米子会場 76 名、那覇会場 102 名
2. 事業日程
米子会場:平成23年10月5日(水)午前9時30分~午後4時30分
那覇会場:平成24年1月26日(木)午前9時30分~午後4時30分
3.補助事業の効果
日本エコレザー及び革の基本知識の普及のために米子市内及び那覇市内で講習会を開催し、無作為のアンケートを実施し、事業効果をまとめた。
3.1 今回講習会の特徴とアンケートの基本姿勢
本委託事業は平成 23 年度から初められ、鳥取県米子市内及び沖縄県那覇市内の2地域において各1日間の講習会を実施した。受講満足度や実施実態を把握し、今後の普及活動に役立てるためにアンケート調査が実施された。本会は過去 10 年間、経済産業省の皮革産業人材育成事業を通して大都市を中心に皮革事者を対象にし、皮革の基礎及び応用知識を伝播し、企業経営に役立たせるために講習会を開催してきた。

今回の日本エコレザー講習会は、主に一般消費者を対象にエコレザーの有用性及び革の素晴らしさを知識として体得してもらう狙いがあり、皮革産業人材育成事業のように知識を直接仕事に活かすことを前提としていない。其の点では、そのため今回は応募方法、講習内容などいろいろな 試みや繰り返し作業がある程度必要であった。

このような経緯の中、本事業を円滑に遂行するため、講義内容、講義方法、皮革に関する勉学履歴、応募形態、今後の参加希望、属性など受講者の特徴、受講希望などをアンケートに設け、皮革への関心度や知識レベルなどを回答してもらった。さらに、受講者との直接対話や質疑など重ね、これらの回答をまとめ本報告書を作成した。

なお、参加者数は、両会場とも盛況で米子 76 名 ( 定員 70 名 ) 、那覇 * 102 名(定員 100 名)、総計 178 名であった。 アンケート回答率は、米子 70 %、那覇 75 %であった。

*  那覇では、応募者多数のため次年度事業として H24 年4月 20 日に沖縄産業支援センターにて第二段の講習会を開催することになっている。この件については「 4 . まとめ」の 13 ~ 16 行目を参照されたい。

3.1.1 受講者の概要1:性別・年齢
 アンケートの回答から、受講者の性別は、米子では、女性が83%、沖縄では女性が70%で、両地域とも女性の受講が圧倒していた(図1)。同様に受講者の年齢層は、米子では、40~60歳代が63%、那覇では20未満~30歳代が62%を占め、米子では中年からの年代層の受講が多く、逆に、那覇では若年層の受講者が多かった(図2)。米子では大興などの梨の収穫期が重なり、猫の手も借りたい時期にもかかわらず皮革講習会に多数足を向けていただいた。
3.1.2 受講者の概要2:職業
 米子での受講者の職業は、第一位が専業主婦 39 %、第二位が服飾専門学校生徒・先生 35 %、第三位が卸・販売 ( 百貨店・専門店・洋品店など )18 %、次いでレザークラフトの生徒・工芸家6%、製造・加工2%であった ( 図3 ) 。

すなわち、米子では第一位と第二位の上位受講者は 74 %を占め、大半が就業者ではなく、いわゆる一般消費者と想定され、当初予想した受講形態に近かった。

那覇は、第一位が主としてブランドショップの卸・販売 42 %、第二位が主に繊維系の製造・加工 20 %、 第三位が服飾専門学校の学生・先生 18 %、次いでレザークラフト生徒・先生 11 %、専業主婦9%であった。那覇の第一位と第二位の上位受講者は 62 %を占め、皮革産業以外の就業者であった。

2地域はいずれも皮革産地ではないが、過去本会が実施してきた皮革産地や皮革大消費地における講習会の受講者の形態と対比すると、米子では、地方の皮革消費地域、那覇では、都市型皮革産地の様相であった。特に、那覇では予想外の業種形態を示した。

3.1.3 皮革の勉学に関する履歴
今回、皮革講習会の開催地を決めたのは過去本会の歴史 50 年において皮革に関する講習会が一度も行われていない地域として米子市と那覇市が選ばれた。この地域における皮革に対する関心度の調査の一環として、皮革の勉強の有無や勉学場所、勉学時間などを調査した。

受講者の皮革学習の履歴については、「過去において皮革の勉強をしたことがある人」は、米子では、僅か 20 %、那覇では 52% であった(図4)。

その内、両地域とも勉強した場所は、専門学校か、レザークラフト教室の 45 %が最大であった(図5)。革について最初に学ぶ所は、感性の高いファッションや工芸部門であった。

しかし、その際の学習時間は、1時間から2日間以内の短時間の人が全体の 60 %であった(図6)。

他方、図4上(勉強履歴無し)で示したように米子では 80 %、那覇では 48 %が過去に勉強したことがないと回答している。勉強しなかった最大の理由は、「勉強する機会がなかった」が米子・那覇とも平均で 83 %であり(図7)、機会があれば、勉強したい人が大勢いた。 その点では、今回の講習会開催は皮革の勉強したい人にとっては絶好のチャンスになった。

3.2 講習会の応募形態と開催までの経緯
3.2.1 講習会への応募のきっかけ
 受講者が講習会の応募を知ったきっかけは、米子と那覇ではかなり様相が異なっていた。

米子では、「新聞掲載(鳥取県・島根県エリアの2紙)を見た」 37 %、「専門学校の薦め」 35 %で、この上位の申し込みだけでも 72 %を占めた(図8)。本会は従来から皮革業界向けの講習会の広報は手馴れていたが、今回のような一般消費者向けの応募法については全くのお手上げ状態で、新聞社への駆け込みを図らざるを得なかった。幸い「新聞社の広告を見て」 37 %もの応募があり、その後は順調に広く伝播され、人集めができた次第であった。本会を信頼し応募くださった勇気ある皆さんに感謝したい。

一方、那覇では、当初は米子と同じように一般消費者からの応募が主と考え、米子の応募形態を想定していた。しかし、幸いに沖縄県庁の地域産業の振興という観点から後援の協力を得たこともあり、工芸技術支援センター、各種業界や団体・組合の協力もあり、新聞掲載がなくても定員以上の人を集めることが出来た。アンケート結果からすると、受講きっかけは、「沖縄県工芸技術支援センター、繊維業界団体・組合の推薦」が 32 %、「職場やレザークラフト店の薦め」が 27 %で、この2つの薦めが全体の 59 %を占めた。沖縄県庁及び各種業界団体・組合、受講企業の皆様方 より 多大の ご支援を賜り心より 御礼申し上げる次第である。

3.3 講習会における講義と実習の配分希望
 「講義と実習を行うとしたら、どのような時間配分がよいか」と尋ねたところ、希望が高い順に、「今回行われたように午前中に講義・午後に実習でよい」が 63 %、「全日を実習にしてほしい」が 23 %、他に希望として、「実習は時間がかかるので説明部分は午前中の講義に移してほしい」が 9 %、最後に、「全日を講義にして欲しい」が5%であった(図9)。

「午前中に講義・午後に実習」との声が一番であった。講義と実習の組合わせにより変化が生まれ、飽きが来なくてよい。特に、実習では、モノ造りができ、楽しいからというのが理由のようである。其の点では、今回はまさしく受講者の希望通りの組合わせ配分であったといえる。

3.4 次回参加の有無や受講料について
 「次回も講習会が開催されるなら、参加するか」を問うたところ 96 %が参加すると答えた(図 10 )。逆に、参加したくない人も4%いた。理由を聞いてみたところ、同じテーマのモノ造りなら遠慮したいといという理由であった。実際には同じものを造ることは通常はないので、この結果を見る限りは、次回もほぼ 100 %が参加することになろう。

次に「有料でも参加するか」との問いでは、「有料でも参加する」が 65 %、一方、「無料だったら参加する」が 35 %であった(図 11 )。

同時に、図 10 で参加したい人に受講料の金額を問うたところ、 1,000 ~ 3,000 円の範囲の人が最も多く、 67 %を占めた。材料費くらいならと金額未記入の人が 23 %を占めていることから、恐らく 67 % +23 %の 90 %近くが、材料費くらいは実費で払ってもよいと考えている(図 12 )。

有料と回答した受講者の中には15,000円を支払っても惜しくないという方もいた。

3.5 アンケートに見られた意見
 アンケートに書かれた意見や感想をまとめた。ここでは両地域で出された同一意見はできるだけ1つにまとめた。
3.5.1 アンケートに見られるポジティブ視点の意見
○良かった・楽しかった・感激した・再度開催などの意見
  • 講義がわかりやすく、色々な革を触り比べられて良かった。また実習も簡単で楽しめた。
  • 多くの革が見られ、感激した。
  • 詳しく勉強出来て大変良かった。
  • はじめて聞くことばかりで非常に参考になった。 普段、体験できないことばかりでとても楽しかった。
  • 知識も増え、実際にもの造りなども体験もできて良かった。大変良い体験ができた。
  • もの造りは初体験で楽しかった。
  • 次回もぜひ開催してほしい。 勉強になったし、楽しかったので 今後も開催して欲しい。
  • 3 ヶ月に一回くらい開催してほしい。
○役立つ・自信が付く・参考になる
  • 大変勉強になった。今後の作品づくりに役立てられるので嬉しい。
  • 今後の仕事にも大いに参考になると思う。
  • 革の基本的なことを勉強ができ、これからはお客との対応に自信が持てることがうれしい。
  • 皮と革の違いがよくわかり、革のことを全部理解したような気持ちになった。学んだことを仕事に役立てたい。
  • 人工皮革が出回っているが改めて皮革の良さを知った。うれしかった。
  • 革作りは大変な仕事であることを DVD で知った。革が貴重であることもよく分かった。
  • 革の本の紹介(皮革ハンドブック)はうれしかった。このような本があることを知らなかった。
  • 革製品の多くはウェットクリーニングができ、靴を簡単に清潔に保つことができることを知った。家族や友人にも知らせたい。その他、参考になることを沢山学べた。
  • 革の色が変色したものを自分で甦らせたいと思っていたが、染めや仕上げ方法によって変色の修正ができるものと、できないものがあることを知った。とても参考になった。
  • 革は肉の副産物であり、環境に寄与していることを知った。皮革業界についても勉強になった。なお、この事項とは別次元であるが、動物製品(革製品・動物由来成分を配合した化粧品・食料など)を排する倫理規定を持つ 完全菜食主義者 のことも気になった。
3.5.2 受講によるネガティブ意見と改善の提言
 定員を超える大盛況の中、実習(もの造りなど)計画を立てた関係で段取り説明や作業時の混雑を防ぎきれなかったため受講者の皆様に大変ご不便をお掛けした。にもかかわらず皆様から心温まる多くのご意見や改善案をいただき、厚く御礼申し上げたい。同時に、これらの意見を真摯に受け止め、今後の改善に 努めたい。

  • 参加人数が多いのに実習講師はあまりにも少なすぎる。もっと増やしてほしい。100名近くの受講者には少なくとも講師を2~3倍に増やすべきと思う。また、班別による説明では、待ち時間が多くなり時間がもったいなく感じた。
  • 実習が混雑したのでやり方を替えるなり今後改善ください。例えば、テーマを絞るとか、簡単な作業にするとか。分割講習(2~3日に分けたり)にするとか。また、受講時間を削ることになるが、半日受講の選択制(講義か実習か)にしたらどうでしょうか。午前の講義だけの受講にするか、午後の実習だけの受講にするか。こうすれば、多人数でも参加し易く、各個人の要望をある程度受け入れられるのはないでしょうか。受講者の中には、丸1日講習会に使うのはもったいない人もいる。
  • 実習で受講者が多くなり過ぎると、作業時に人同士との接触が耐え間なく、動き難く、作業が捗らない。また、実習時の説明は聞きづらくなり、実習の進行に拙さが目立つようになる。1講師で受講者は30名以下にしてほしい。
  • 実習は楽しく、ゆとりのある講習会を望みたい。
3.5.3 受講によるその他の苦情意見
  • 那覇会場でも朝から寒かった。一日中震えていた。会場設営時に気を付けてほしかった。なお,この点についてホテル側に暖房を申し入れたが、暖房設定がない会場であった。
  • 革を最後に分配・プレゼントされ、一人何枚も持って帰る人を見かけ、羨ましかった。みんなに行き渡る様にしたほうがいい。同じ受講者として大損した気持ちになる。
3.5.4 希望・要望意見
 各個人、それぞれ異なる要望があって当たり前であり、アンケートには多種多様の意見や提案がある。一つ一つに直ぐには対応は出来ないが、下記のような要望は工夫により実現可能のことが多いので努力したい。

  • 趣味と仕事ではとらえ方が違うと思う。自分は趣味に徹したいので革特性の話はあまり興味が湧かなかった。だから、これからは全日で、講義か、実習かのどちらかを選択できるようにしてほしい。
  • 楽しむより仕事優先の講習会にしてほしい。もっと勉強したかった。情報量の多い講義の方を重視してほしい。
  • 皮革製品は多く持っているが、どうしても汚れがひどくなるまで持つことが多く、手入れ方法をもっと学びたい。またクリーニング方法や手入れ方法も学びたい。
  • 革の特性などについてもっと詳しく聞きたかった。実習も楽しいが、革特性も大事である。
  • 合皮との区別にもっと時間をかけてほしい。
  • 今後、エコレザーについてもっと知りたい。
  • もう少し苦情処理について詳しく知りたい。
  • 松江~米子地域でしっかり皮革のことを勉強できるところが欲しい。
  • 沖縄では最新の革が手に入らないし、革の種類が限られているので講習会といっしょに革を販売してほしい。
  • DVDは分かり易くすばらしい教材であった。ぜひほしい。革製造だけでなく製品づくりのDVDも作ってほしい。特に、バッグ製作のビデオがほしい。DVDは分かりやすかったので終了後に質疑をしてほしかった。
  • 沖縄では布とコンビで革を利用したいのでバッグ・財布など製作のコツを学びたい。
  • 試料革の配布が多かったことはうれしいが、その都度の配布は時間がかかり、時間がもったいないので講義前に配布してほしい。
  • 講義の説明時にテキストページを言ってほしい。
  • 革産地の姫路を一度訪問したい。
  • 主催者側の負担にならないよう記念品等の軽減を考えてもらってもよい。プレゼントより講習会の全体の時間や講師を増やしてほしい。
  • 受講した知識を整理するためにもぜひ最後には質問の時間をとってほしい。受講者がどんな質問をするのかも知りたいし、聞き逃した内容についても頭の整理ができるから、ぜひ時間を取って欲しい。
4.まとめ
 本会は、過去 10 年間、皮革人材育成事業を通じ、皮革技術に関する基礎・応用知識に関する講習会を実施してきた。また、 2006 年にエコレザーの基準値を策定し、日本エコレザー認定システムを完成させた。この2つ大きな実績をさらには発展させるため、本会は H23 年度に ( 社 ) 日本皮革産業連合会から日本エコレザー講習会事業を受託した。

今回は、鳥取県米子市及び沖縄県那覇市の2地域における講習会の実施結果を報告する。 日本エコレザー講習会事業は、講習会を通して主として一般消費者を対象に エコレザーの有用性及び 革の素晴らしさを PR することが求められる。

そのために午前中に皮革の基本知識を講義し、午後に 一般消費者の 関心の高い小物づくり・革の見方・革の取り扱い方 など の実習を行った。 講習会終了後にアンケート調査を行い、成果を確認するためにアンケート調査を行い、また受講者との直接対話や質疑などから講義の理解度、要望、期待度などを聞きだし、本報告書を以下のようにまとめた。

講習会の受講者数は、米子では 76 名、那覇では 102 名、総数 178 名であった。ここで、特に、那覇では、実質 160 名を超える応募があったために定員を超えた 60 名だけの特別講習会を次年度事業として H24 年4月 20 日に沖縄産業支援センターにて開催することになっていることを加筆したい。

受講者の性別・年齢は、米子では、女性が 83 %、沖縄では女性が 70 %で、両地域とも女性が圧倒的に多かった。年齢層は、米子では、 40 ~ 60 歳代が 63 %、那覇では 20 ~ 30 歳代が 62 %を占め、米子では中年以上の年代層が多く、逆に、那覇では若年層の受講者が多かった。アンケートの回答率は、米子では 70 %、那覇では 75 %を示した。

受講者の職業は、米子では第一位が専業主婦・主夫 39 %、第二位が服飾専門学校生徒・先生 35 %、第三位が卸・販売 ( 百貨店・専門店・洋品店など )18 %、次いでレザークラフトの生徒・工芸家6%、製造・加工2%であった。すなわち、米子では第一位と第二位の上位受講者は 74 %を占め、大半は就業者ではなく、いわゆる一般消費者と想定された。一方、那覇では、第一位が主に免税ブランドショップの卸・販売 42 %、第二位が主に繊維系の製造・加工 20 %、 第三位が専門学校の学生・教師 18 %、次いでレザークラフト教室の生徒・先生 11 %、専業主婦・主夫9%であった。那覇の第一位と第二位の上位受講者は 62 %を占め、これら上位受講者は皮革産業以外の就業者であった。

受講者の皮革学習の履歴については、「過去において皮革の勉強をしたことがある人」は、米子では、僅か 20 %、那覇では 52% であった。その内、両地域とも勉強した主な場所は、専門学校か、レザークラフト教室であったとしている。革について最初に学ぶ所は、感性の高いファッションや工芸部門であった。しかし、その際の学習時間は、1時間から2日間以内の短時間の人が全体の 60 %であった。他方、「今までに皮革の勉強をしたことがない人」は、米子では 80 %、那覇では 48 %が過去に勉強したことがないと回答した。勉強しない最大の理由は、「勉強する機会がなかった」が米子・那覇とも平均で 83 %であり、機会があれば、勉強したい人が大勢いた。 その点では、今回の講習会開催は皮革の勉強したい人にとっては絶好のチャンスであった。

講習会の応募形態と開催までの経緯は、講習会への応募のきっかけを調べた。米子では、地方新聞掲載の記事を見て 37 %、専門学校の薦め 35 %、この2つのきっかけが最大を占めた。那覇では、沖縄県工芸技術支援センター、繊維業界団体・組合の推薦 32 %、職場やレザークラフト店の薦め 27 %であり、応募に至る経緯やきっかけは、其のときの事前調査状況や地元の後援状況により大きな差異を示した。

講習会における講義コースと実習コースの配分は、初心者が多く占める講習会であるので非常にアンケート結果に関心がもたれていた。「1日の講習会ならば、午前中に講義・午後に実習でよい」が 63 %、「全日を実習にしてほしい」が 23 %、他の希望として、「実習は時間がかかるので説明部分は午前中の講義に移して実習時間を沢山ほしい」が 9 %、最後に、「全日を講義にしてほし」が5%であった。 ファッションや工芸部門の勉強だけでは革の基本知識まで踏み込むことは中々難しいので、この機会に 実習・体感学習の他に講義も半部くらいが要望されたと解釈した。

再度講習会を開催するとしたら参加するかと問うと、 96 %が参加するとの回答があった。中には3週間ごとでもよいから開催してほしいとの要望もでていた。しかし、逆に、参加したくない人も4%いた。

受講料について尋ねてみたところ、「有料でも参加するか」との問いでは、はい ( 有料でも参加する ) が 65 %、一方、いいえ ( 無料だったら参加する ) が 35 %であった。同時に、受講料の金額を問うたところ、 1,000 ~ 3,000 円の範囲が最も多く、 67 %もいた。これは、材料費くらいなら実費で払いたいという申し出であったかもしれない。なぜなら。今回は本会の事業受託先が全て負担するとのことで無料開放であったのでそれに対して受講者が気遣いされたものと考える。さらに、 受講者の中には 15,000 円を支払っても惜しくない講習会であったと意見する人もいたことを記しておこう。

アンケートには多くのポジティブな、あるいはネガティブな様々な意見を沢山いただいた。

楽しく・感激した意見では、「 はじめて聞くことばかりで非常に参考になった」、「 知識も増え、実際にモノ造りなども体験もできて良かった。大変良い体験ができた」、また役立ち、自信が持てた・参考になった意見では、「大変勉強になった。今後の作品づくりに役立てられるので嬉しい」、「革の基本的なことを勉強ができ、これからはお客との対応に自信が持てることがうれしい」など趣味や仕事にプラスになることを述べている。

一方、受講による苦情意見と改善の提言では、「実習では 100 名近くの受講者があり、講師一人では、手が回らないので 講師を2~3倍に増やすべきと思う」、「実習は多くても1グループ 30 名以下の受講者にすべきである」など単なる苦情ではなく、心遣いまで頂いた。また、 「 那覇では1月 26 日なら桜も咲き初め暖かくなるが、今年は会場も朝から寒かったので適温にしてほしかった」、「 革を最後に分配・プレゼントされたが、一人何枚も持って帰る人を見かけ、羨ましかった。みんなに行き渡る様にしたほうがいい」という苦情もいただいた。

希望・要望の意見では、「 趣味と仕事では捉え方が違うと思う。自分から見ると革は趣味に徹したいので革特性の話はあまり興味が湧かない。だから、これからは全日を、講義コースと実習コースのどちらかに選択できるようにしてほしい」という人もいた。また「 革を楽しむというより仕事優先の講習会にしてほしい。もっと勉強したかった。情報量の多い講義の方を重視してほしい」という意見も頂いた。

それぞれ講習会に参加される人によって目的は異なるので主催者側としては、各個人が最大限の満足を得られるような道筋を今後見出していきたい。

 

なお、詳細については別紙アンケートの集計結果および 当法人 HP ( http://www.hikaku-kyo.org/index.html )にも貼付されているので参照されたい。

 

写真:那覇会場  講義風景 革の見方 ( 上 ) 及び実習 ( 下 )
写真:米子会場 講義風景 実習途中の作品
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