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原料皮の仕立て(キュアリング)

(1)乾燥皮(干皮)

 生皮を日光で乾燥したものを素乾皮といい、東南アジア、アフリカ、インドなどでよく行われている。余り強い日光乾燥は表面だけ乾燥し、内部に水分が残り腐敗の原因にもなる。

(2)塩蔵皮

1) 散塩法

 剥皮された皮を水洗し、水切り後、両面に細かい固形の食塩を散布する。肉面を上にして山積 する。通常、塩蔵により原料皮重量に対し15~20%程度の塩を吸収する。塩の浸透により脱水作用が起こり、子牛皮で6~12%、成牛皮で7~10%の目減りが生じる。

2) 濃厚塩水による方法(ブラインキュア)

 剥皮された生皮は短時間の内に水洗して皮の温度を下げるとともに血液その他の汚物を取り除き、トリミングしたのちフレッシングする。レースウエイ中のブライン(濃厚食塩水:86~100 Salometer, 飽和食塩水)溶液に18~24時間処理する。レースウエイは水かき用水車で皮を攪拌する。浴中に殺菌剤を添加することもある。その後水絞り機にかけ、あるいは積み置きして脱水し、選別、固形塩散布、パレット積み、計量、出荷の順となる。
塩蔵牛皮では最高水分:48%、最低水分;14%および水分と灰分の比50:25以上を目安としている。塩蔵皮の品質低下は剥皮後の処理状態によっても異なってくる。

(3)ウェットブルー

 原料皮供給国の高付加価値化と公害防止関係からクロム鞣し工程まで進めたウェットブルーも原料皮の仕立て方の一つである。生皮(グリーンハイド)をフレッシング後直ちに脱毛工程へ進み、分割をしないでクロム鞣しに進む方法と、分割してからクロム鞣しを行う 2通りの方法がある。
牛皮のウェットブルーはほとんどがアメリカから輸入されているが、豚皮のウェットブルーなどは、わが国から東南アジア等へ多く輸出している。

(4)ウェットホワイト

 クロムの公害問題から非クロム鞣しがあるが、その前処理としてグルタルアルデヒド、アルミニウム、合成タンニンなどで予備的に鞣したものをウェットホワイトと称している。ウェットブルーに比べ皮の色調が白い。

(5)ピックルハイド、ピックルシープ

 ピックルハイド、ピックルシープはピックル工程まで進めた皮のことを称し、前者は牛皮、後者は羊皮を指す。ピックル皮は輸送や貯蔵中の温度や期間により、その性質にかなりの変化が起こる。製品の品質という点では硫酸濃度0.3%、塩化ナトリウム12%、貯蔵温度20℃以下という条件が好ましい。酸が多すぎると皮質分が分解して黄色に変色し、塩化ナトリウムが少ないとカビが発生しやすい。

(6)冷却保存、冷凍保存

 塩蔵処理に替わる仕立て方として冷却保存が検討されている。モンゴル等では冬季に?皮したものはほとんどが冷凍保存の状態である。

(7) クラストレザー

 クロムまたは植物タンニン鞣しを行い少量の加脂剤を加え乾燥した状態で保存している革の総称である。特にシープなどはタンドシープと呼び東南アジア地域でよく行われている。また、アルゼンチンなどでは牛皮をクロム鞣し、乾燥して白クラストレザーと称し生産している。

原料皮の品質

動物の皮膚は成育過程で虫による傷、イバラ、鉄柵等によるかき傷、病気や糞などによる皮膚の障害などを受ける。また、焼印といって牧場主が所有物を明らかにするため、臀部等に焼きゴテで印をつける場合がある。この部分は火傷として皮膚が損傷されている。
このように、原料皮は様々な損傷を受けている場合があり、革の品質に大きく影響する。損傷の大きな原料皮は下級品に位置づけられる場合が多い。

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