日本の皮革技術をリードする NPO法人 日本皮革技術協会

Q&A

鞣し方法によって環境への影響は異なるのでしょうか?
世界中で使われている主要な鞣し剤としてクロム、植物タンニン、アルデヒドについて、ライフサイクル分析(LCA)を行った結果、これらの鞣し剤による差はない、ことが明らかにされています。
クロム及びアルデヒドの環境への負荷は類似していますが、植物タンニンは異なっていますが、ISO(オー)14040に基づき、再生不能資源の枯渇、富栄養価、光化学オキシダント、酸性化、温室効果、再生不能エネルギー、水使用量の観点から環境への影響について検討しました。その結果、これらの3種類の鞣し剤による環境への影響には差がないことが明らかになりました。
したがって、どのような鞣し剤を使用するかではなく、適切な製造工程及び環境管理が行われた製革工場で製造を行うことが重要です。
「鞣しにはクロムを使うと聞きましたが、安全なのでしょうか?」
クロムについて、様々な情報が流れています。革にクロムを使っている、しかも重金属というと、有害と思われるかもしれません。
しかし、重金属とは比重が大きい金属のことを総称するもので、健康に有害なものもありますが、生体にとって必須元素もあります。
重金属の代表的なものとして、白金、金、水銀、銀、鉛、銅、鉄、クロムなどがあります。

クロム鞣しは、100年以上前から使われるようになった比較的新しい鞣し方法です。現在は、世界中で製造される革の約80%がクロム鞣しと推定されています。クロム鞣しには3価クロムが使用されています。安価で効果的な鞣剤であることが知られています。様々な用途に適用できる鞣し方法で、柔軟性、弾力性、耐熱性、染色性などに優れています。

「海外では革中の6価クロムが規制されていると聞きましたが、どのようなものでしょうか?」
EUでは、REACH規制の附属書XVIIに6価クロム化合物が登録され、2015年5月1日から以下のような規制が開始しました。
・皮膚と接触するようになる革製品は、革の乾燥質量の3mg/kg(0.0003%)以上の6価クロムを含有したものを上市してはならない。
・皮膚と接触するようになる革部品を含む製品は、革部品の乾燥重量の3mg/kg(0.0003%)以上の6価クロムを含有したものを上市してはならない。
・これらの中で、2015年3月1日以前に連合内で最終消費者に中古で上市されたものは除外する。
皮革の検査はどこに頼めばいいか? またコストは?
一般的な革のJISに基づく試験は、東京都立皮革技術センター、兵庫県立工業技術センター皮革工業技術支援センター、一般財団法人日本皮革研究所で受け付けています。
靴については、東京都立皮革技術センター台東支所で受け付けています。
日本エコレザーの分析については、兵庫県立工業技術センター皮革工業技術支援センター、一般財団法人日本皮革研究所で受け付けています。
詳細及び費用については各機関にお問い合わせください。
JESラベルの対象になる革を教えてください。
認定対象は“皮膚断面繊維構造を損なわない革”に限られます。
革は、古来より各種動物の肉(食料)の副産物としての原料皮を鞣し・加工し、利用されてきました。革づくり工程では、銀面を生かした銀付き革が最高の品位とされます。工程中で皮膚断面が分割され、銀面を失ったものは床革として再利用されます。
JESラベル対象革は、再利用においても革の機能を損なわないことが大前提となっています。そのための最低条件として、次の2つの条件を満たすものとなります。
① 銀面を有する銀付き革、または革繊維構造を損なわない(粉砕などしない)銀付き革の副生物である床革であること。
② 仕上げ・塗装膜厚が0.15mm(150μm)以下であり、なおかつ断面構造の70%以上が革であること。
アゾ染料の規制とは?
染料の化学構造中にアゾ結合(-N=N-)をもつ合成染料の総称で、色調が豊富でしかも安価であるため3000種類以上、染料の約65%を占めていて広く使われています。
ほとんどのアゾ染料は安全ですが、一部のアゾ染料は、皮膚表面や体内で微生物などによって分解されたときに、芳香族第一アミン類を生成します。このうち、特に発がん性またはその恐れが指摘されているもの24種類を特定芳香族アミンと呼んでいます。これらを生成するアゾ染料は約5%程度といわれています。これらの特定芳香族アミンを生成するアゾ染料は、2016年4月1日から有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律によって規制されています。
特定芳香族アミンに発がん性があると聞きました。どのようなものですか?
一部のアゾ染料は、皮膚表面や体内で微生物などによって分解されたときに、芳香族アミンを生成することがあります。そのうち、発がん性またはその恐れが指摘されているもの24種類を特定芳香族アミンといいます。
オランダの国立公衆健康研究所によって、特定芳香族アミンによってがんを発症するリスクは、無視できるレベル(1×10-6、がんになる人が100万人に一人増えるリスクレベル)を超えるということで、EUでは禁止され、諸外国においても禁止されました。
日本においても、「特定芳香族アミンを容易に生成するアゾ染料」として、2016年4月1日から有害物質を含有する家庭用品の規制に関する法律によって規制が始まっています。革製品では、下着、手袋、中衣、外衣、帽子、床敷物が規定対象に指定されています。
これらの染料は既に製造禁止になっているので、一般には流通していませんが、在庫などで残っている場合に使用される可能性があります。
ただ、規制値自体は非常に低い値に設定されており、規制値以上に特定芳香族アミンが検出されたからといって、直ちに人体に影響が出るわけではありません。総アミン類の総溶出量30 mg/kg(現在の規制値)の製品による生涯発がんリスクは4.6×10-6と算出されます。すなわち、がんになる人が100万人に4.6人増えるリスクレベルと算出されたということです。これは、我が国における大気環境基準の設定に当たり、現段階でのがんを発症するリスを無視できるレベル(1×10-5、すなわち10万人に1人増えるリスクレベル)を考えると、このリスクは受容しうるものです。
今のところ、世界的に見ても健康被害が発生した事例は確認されていません。当協会が例年実施している市場調査においても、ここ数年は、日本製の革製品で特定芳香族アミンが検出されたことはほとんどありません。また、IARCの発がんリスク分類(下表)を見ても、過剰に恐れる必要はありません。
しかし、世界的な流れは、科学的に安全でないものは使用しない方向で動いていますので、皮革産業としても、現在では特定芳香族アミンを生成するアゾ染料は使用していません。

 

特定芳香族アミンのIARCの発がんリスク分類

 グループ 評価   特定芳香族アミン その他の例 
 1  ヒトに対して発がん性がある  5種類  アルコール飲料、タバコ喫煙(能動、受動)、加工肉、経口避妊薬の常用など
 2A  ヒトに対しておそらく発がん性がある  1種類  紫外線、赤身肉(牛豚羊馬山羊など)、65℃以上の熱い飲物など
 2B  ヒトに対して発がん性の可能性がある  15種類  食品添加物類、コーヒー、漬物、ガソリンエンジンの排ガスなど
 3  ヒトに対する発がん性について分類できない  3種類  
 4  ヒトに対しておそらく発がん性がない  0  

 

学術集会や講習会に参加したいがどうすればいいか?
日本皮革技術協会に入会してください。会員になれば、学術集会に参加することができます。講習会については、日本皮革技術協会、皮革産業連合会、東京都立皮革技術センター、皮革消費科学会などで随時開催されています。それぞれホームページでご確認ください。
研究や論文を発表したいがどうすればいいか?
日本では、日本皮革技術協会に加入していただくと、研究発表会での発表、皮革科学会誌への投稿ができます。
海外では、Journal of the Society of Leather Technologists and Chemists (SLTC)、Journal of the American Leather Chemists Association (ALCA)が主要な学会誌です。また、2年に1回、International Union of Leather Technologists and Chemists Societies (IULTCS)が開催され、総会及び研究発表会が行われています。
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